ダイヤモンド・リアルティ・マネジメント株式会社

Special Interview

デザインとは、
人とあらゆるものを
繋ぐもの

グラフィックデザイナー 佐藤 卓

ダイヤモンド・リアルティ・マネジメント社の
ロゴマークのデザインを手掛けた
グラフィックデザイナー 佐藤卓さんに、
ロゴマークへの想いや
デザインに対する考え方などを伺いました。

DREAM シンボルマークに込めた想い

DREAMのシンボルマークは、菱型の連続パターンを、独自の視点でフォーカスした形です。それは、三菱商事グループの財産を生かしながら、今までにない新しい視点で常に仕事に取り組んでいく、会社の姿勢を表しています。つまり、周囲の円形が、DREAMの輪郭を表し、その円(曲線)は、内在する菱形(直線)が表す多様な取り組みに対比して、常にフォーカスされた部分を、際立たせる役割を担っています。

佐藤 卓

デザインは主役ではない

大澤 佐藤先生にとって、デザインとは何ですか?

佐藤 「人とあらゆるものを繋ぐもの」ですね。人と人だったり、人と物だったり。デザインは主役でも目的でもないんですよね。例えば、椅子のデザイン。椅子は座るという「こと」を提供する為のもので、デザインにフォーカスされる必要はない。その奥にあるコトにスムーズに間をつないであげればいいこと。やりすぎてもいけない、やり足りなくてもいけない。ちょうどいい、っていうのがどのへんなのか、常に探っています。

野田 佐藤先生は、アートとデザインの違いをどのように捉えていますか?

佐藤 私が尊敬する元グラフィックデザイナーで今は彫刻家の五十嵐威暢さんは、「アートは想い、デザインは想いやり」と言っています。アートは自分のメッセージを発信する、そして多くの人たちにこれからの未来の営みのために示唆を与えるもの。一方デザインは、自分ではなく環境や相手だったり、社会のために何をするべきかということをやっていくんですね。何をやりたいかではなく何をやるべきか、ということを見極めていくものです。
 若いころラテン音楽をやっていましたが、ラテン音楽は、ロックのような「俺の音楽を聞け」というものではなく、その音楽でペアの2 人がどれだけ気持ち良くダンスしてもらえるか、というもので、主役ではないんです。デザインの考え方と共通するものがあります。
 また、趣味でサーフィンをやっていますが、波は自然のリズムであり人間の力で押し返すことはできません。自然に抗うことなく沿わせながらやりたいことをやっていく。デザインも、無理やりねじ伏せていくものではなくて、環境を把握して流れや波をよく解った上でどういう風に進めるとスムーズなのか、心地よいのか、そんなところがデザインと共通していますね。

強い好奇心で何でも面白く

大澤 我々を取り巻く環境がどんどん移り変わる時代ですが、佐藤先生はその時代時代をどのように捉えていますか。

佐藤 いつも見ているのは、特別なものではなく、ごく日常ですね。電車に乗ったり、道を歩いていたりする時の風景や歩いている方のファッションを見たり、隣で食べてる方の食事を見たり。これは皆さんも普通にやっていることだと思いますが、その中から感じ取れることって実はもの凄い情報量だと思うんです。それも、クリエイターの目ではなくて、できるだけ普通の目でみること。普通の立ち位置で世の中をみていると、「あ、この人の考え方は新しいな」とか見えてくる。
 あと、好奇心を持って見ること。私は好奇心が子供みたいに強いんです。いろんなものを見て、なんでこうなっているんだろう、って知りたくなる。大量生産品をデザインの視点で解剖する「デザインの解剖」プロジェクトはそれをかたちにしたものなんです。身近なものを、なんでなんでって突き詰めていくと、必ずそこには理由があって、誰も知らない面白い情報がどんどん出てくる。自分が興味を持ったものが、なんで自分の興味を引いたのか、その理由をとことん調べたくなるんです。水やお米の展覧会をやったり、いろんなものに深く入っていきました。
 若い時には好きなものしか興味を持たず、嫌いなものは自分から排除していくかと思いますが、ある時、嫌いなものを積極的に見てみようと思ったんです。なんで嫌いなのか突き詰めていくと、そこにはまた理由があったりして、嫌いだと思っていたものが面白いものに変わったりするんです。

デザインの解剖2  富士フイルム「写ルンです」 デザインの解剖4  明治乳業(現・明治)「明治おいしい牛乳」

「デザインの解剖」プロジェクト

2001年より取り組んでいる、身近な製品を「デザインの視点」で解剖し、各製品の成り立ちを徹底して検証する試み。
一般的に紹介されることのなかった、原料や製法、製品管理から流通に至る幅広い要素が掘り下げられる(解剖する)ことで、私たちが知っていると思いながら、知らない多くのことに気づくきっかけをもたらしている。

上:デザインの解剖2 富士フイルム「写ルンです」
下:デザインの解剖4 明治乳業(現・明治)「明治おいしい牛乳」
(写真提供:日本デザインコミッティー)

大澤 それはビジネスにおいても良いヒントですね。嫌いなものを調べることはなかなかないですよね。

佐藤 自分が拒否反応を示したはずなのに、しばらく経ってどんどん魅力を感じて逆にすごく好きになってしまったことがあったんですね。これは誰でも経験しているような気がするんです。大嫌いなものって自分の中で引っかかっているということなんですよね。どうでもいいものは、引っかかってないので、好きにも嫌いにもならず流れていく。引っかかるということは必ず何かがそこにある。そこに積極的に向かって行こうと思ったんですね。そしたらもう面白くないものが何一つないということが分かってきて。つくづく今そう思います。

大澤 素晴らしいですね。色々なものに興味を持つってエネルギーが必要ですよね。

野田 好奇心を持ち続けることが大切ですね。

大澤・野田 本日はお忙しい中、ありがとうございました。

佐藤 卓

さとう たく 1955年 生まれ
1979年東京藝術大学デザイン科卒業。81年同大学院修了。株式会社電通を経て、84年佐藤卓デザイン事務所設立。
「ロッテ キシリトールガム」、「明治おいしい牛乳」などの商品デザイン、「国立科学博物館」、「全国高校野球選手権大会」などのシンボルマークを手掛ける。また、NHK Eテレ『にほんごであそぼ』アートディレクター、「デザインあ」の総合指導を務める。著書に『塑する思考』(新潮社)など。

インタビュアー

  • 大澤 晋

    ダイヤモンド・リアルティ・マネジメント
    管理本部 本部長補佐
  • 野田 眞紀子

    ダイヤモンド・リアルティ・マネジメント
    管理本部 本部付次長
画像提供:IVORY Plus, LLC